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2006年12月04日

シリーズ:相続の現場から〜ギリギリの遺言書 第五回

遺言書作成当日、約束の時間より少し早く着いた私は、田中さんの父親と田中さんが公証役場に入って来るのを見てホッとした。田中さんの父親も体調は良さそうだ。
公証人と遺言者、それに証人である私と司法書士の以上4名がテーブルを挟み向かい合った。まず公証人から遺言者、証人2名の本人確認がなされた。私たち証人2名に対しては運転免許証で確認された。

公証人は私との事前の打合せによってあらかじめ用意してあった遺言書をゆっくりと読み上げ、ひとつづつ丁寧に説明し、遺言者にその内容に間違いがないか質問していった。遺言者である田中さんの父親は、そのたびに「はい、そのとおりです。」と言いながらうなずいていく。

ここで重要なのは、公証人の質問に対して単にうなずくだけでは「遺言者は、遺言をするときにおいてその能力を有していなければならない。(民法963条)」に反するため、田中さんの父親は『遺言能力無し』と判断されて遺言書作成が中止されてしまうのだ。

田中さんの父親は無事全ての質問に答え、公証人は父親の遺言する全ての内容に誤りがないことを承認し、田中さんの父親と証人2名は遺言書に署名押印した。最後に公証人が署名押印し、田中さんの父親の遺言公正証書が完成したのである。

その日公証役場で遺言公正証書を完成させるのに要した時間は、約20分だった。

(つづく)